人気ブログランキング | 話題のタグを見る

キムカル丼

松屋に入った。時刻は午後3時。客も疎(まば)ら、4人しかいない。
俺は食券機の前で思慮する事2秒。殆ど迷わずキムカル丼を選ぶ。
カウンターに着く。店員が水を出す。食券を差し出す。流れるような動き。淀むところは何一つない・・・・いや、無かった。
待ってる間の俺はいつも焼き場をチェックする。俺好みの焼き加減に仕上げれる奴はこの店に一人しかいない。中国人の親父だ。しかし、今日は違う。というよりも、知らない顔だ。
そうか、新人か。客が少ないから練習も兼ねさせてるのだな。
その新人と思(おぼ)しき人は中国人の・・・年のころなら50くらいのおばちゃんだ。
おばちゃん、お袋的な焼き方で頼むよ。俺は心の中で暖かい声援を送った。
水を飲む。箸を手に取る。カウンターに届いた瞬間にかっこむためだ。そしてその準備、OK!
しかし、しかしだ。中々出てこない・・・そして、おばちゃんの様子がおかしい。
カウンターから筒抜けのキッチン。店長は牛丼に勤しんでいる。そして、そのすぐ後ろのおばちゃんは背中を向けてなにやらコソコソとしている。
おかしいぞ!店長!頼むからチェックしてくれ。暗示つつも心の声は届かない。
キムカル丼はごはんの上にカルビ、その上にキムチ、その上に刻み海苔、その上に刻み葱が正解だが、このおばちゃんはそれを作り上げたにもかかわらず更にその上にキムチを乗せ始めたのだ。当然、キムチはこんもりだ。思うにこのおばちゃんは正解のキムカル丼を作ったのに、やばい!海苔は乗せないんだった・・・と勝手に思い違いをしたのだ。
そして、必死に平然を繕いキムカル丼を出す・・・がここで店長の待ったが入った。
安堵の俺。正に危機一髪だ。
海苔がないよ海苔が・・・店長が注意する。
そしたら、このおばちゃんは海苔は入れていましたと言いながら、一番上のカモフラージュキムチを取り除きべちゃべちゃになった海苔のまま自信満々に出す。
その時、俺の心の声と店長の声が一致した。
ダメダメ、作り直し!
おばちゃんは焦っている。客が5人だけなのに焦っている。
店長はすぐさま俺に向かい、すみません、もう少しお待ちください。
俺も愛想笑いで返す。気まずい空間。
で、キムカル丼が出来る。
しかし、一口食ったら吐いてしまった。肉が生なのだ。おいおいおいおい。
勿論それを突っ返す。店長まで焦りだした。その間に他の客も帰り松屋の中はおばちゃんと店長と3人だけ。
最後は店長がキムカル丼を作った。最初からそうしてくれ。
俺は聞こえるか聞こえないかの声でキムカル丼の作り方をレクチャーしている二人の前でいつもより早くキムカル丼をかっ込むのだった。
by ricayaa | 2007-12-18 17:40


<< DNA COBRAと忘年会 >>